前回は、エアコンと健康の深い関係についてご説明しました。
今回もエアコンがテーマですが、お話しするのは、エアコンで一番多いトラブル「冷えない・温まらない」の原因と対処法です。実はこれ、ものすご〜くリクエストが多かったので、やっとお話できて嬉しいです(笑)
とりあえず、いつものように先にザッとネタばらしをしましょう。
【エアコンが冷えない、温まらない原因】
・勘違い
・風向きが間違っている
・フィルターにホコリが詰まっている
・熱交換器の不具合
・室外機の不具合
・冷媒(ガス)漏れ
・コンプレッサーの故障
・機械部の故障
・エアコンの性能と部屋が釣り合ってない
それぞれの項目に、より細分化した説明を書いているのでぜひ最後まで読んでください。エアコントラブルで悩んでいるなら、きっと当てはまる原因が見つかるはずです。
では早速、各項目についてご紹介してきたいのですが、、、その前にまずエアコンの冷やす・温める仕組みを超簡単にご説明します。これがなんとなくでもわかっていると「なぜ今このトラブルが起きているのか」が理解しやすくなります。
エアコンの仕組み
エアコンの仕組みを理解するにはまず下記の原理を覚えましょう。
◯液体は気体に変わるとき、周りから熱を奪う(周りが冷える)
◯気体は液体に変わるとき、周りに熱を放出する(熱くなる)
またエアコンは、室内機と室外機の2つがセットになった家電です。知っている方がほとんどだと思いますが、念のためご説明しますね。
室内機とは・・・家の中に設置されている、通常私たちがエアコンと認識しているもの。
室外機とは・・・室内機を設置している部屋の外にあるファンがついた箱のようなもの。室内機とはパイプでつながっています。
室内機と室外機をつなぐパイプの中には「冷媒(ガス)」と呼ばれる物質がぐるぐると回っています。その冷媒が室内機・室外機で気化(熱を奪う)、液化(熱を放出)を繰り返すことで部屋を温めたり、冷やしたりしているのです。
暖房の仕組み
室外機のコンプレッサー(圧縮機)で【液体】から【気体】となり、外の空気から熱を奪う。(→このとき、室外機から冷風が出ます。)
外の空気から奪った熱を冷媒にのせ、室内機に移動。熱交換器で【気体】から【液体】になり、熱を放出する。(→このとき室内機から部屋を温める温風が出ます。つまり暖房の熱は外の空気から奪った熱なんです。)
冷房の仕組み
室内機の熱交換器で【液体】から【気体】となり、部屋の空気から熱を奪う。(→このとき室内機から部屋を冷やす冷風が出ます。つまり冷房の冷風は元々室内にあった空気から熱を取り除いたものなんです。)
室外機に移動しコンプレッサー(圧縮機)で【気体】から【液体】となり、熱を放出する。(→このとき、室外機から温風が出ます。)
要は「暖房の場合、外の空気から熱を奪い、その熱を室内に吐き出す」「冷房の場合、室内の空気から熱を奪い、熱がなくなって冷えた空気を再び室内に戻す」ということ。これ、頭に入れておいてくださいね。
エアコンが動いているのに、冷えない、温まらない。原因と対処法
エアコンが冷えない、温まらない。これエアコントラブルで断トツの1位。カデンのエトウの家電レスキューにもよくお問い合わせをいただきます。いくつかの原因が考えられるので、それぞれを詳しく説明していきますね。
原因1 勘違い
「え!?」と驚かれそうですが…。特にご年配の方に多いです。
「エアコンの電源が入ってない」
「リモコンの電池が切れている」
「暖房のつもりが冷房になっていた」
「風量が微風になっていた」
など、一つ一つを見ると本当に単純なものですね。でも一回「冷えないor温まらない」と思うと頭はプチパニックを起こし、気づけないものなんです。
それに、そもそもご年配の方にとっての暖房とはコタツやストーブ。エアコンで部屋をあたためるという感覚があまりありません。だから、気が回らないのも仕方ないのかな、という気がします。
もし周りで「冷えないor温まらない」とプチパニック起こしている人がいたら、本体の電源やリモコンの電池、冷暖房の切り替え、風量がちゃんとしているか確認するよう伝えてあげてください。他人から声をかけられると結構落ち着くものです。
原因2 風向きが間違っている
風向きが間違っていると、一部ばかり冷えるor温まり、エアコンが効いていないと感じることがあります。下記の冷気、暖気の性質をうまく利用して部屋を効果的に冷やすor温めましょう。
冷房の場合、風向きは上向きに設定
冷気は上から下へ移動します。風向きを下にしていると一部の床ばかり冷えてしまいます。
暖房の場合、風向きは下向きに設定
暖気は冷気とは逆に、下から上へ移動します。風向きを上にしていると、天井付近ばかり温まってしまいます。頭がぼーっとするなどの弊害もあるので気をつけましょう。
原因3 フィルターにホコリが詰まっている
フィルターはエアコンの正面(前面のフタを開けたところ)にあります。ここが詰まっていると、冷風も、温風も通りにくくなります。物理的な障害ですね。
対処法は簡単。お掃除をしましょう。ホコリは風の通り道を阻害するだけでなく、カビの餌にもなってしまいます。
月2回は掃除をし、そのうち1回は水洗いまで行いましょう。
エアコンのフィルター掃除の方法は前回詳しくご説明しました。忘れている人は下記のリンクからもう一度復習しましょう。
→エアコンのフィルターのお掃除手順はこちらから
原因4 室内機の熱交換器が汚れている。もしくは故障している。
◯熱交換器が汚れている場合
エアコンが冷える仕組みでもご説明したように、室内機にある熱交換器は空気を冷やしたり、温めたりするとても重要な場所。そこに不具合が生じると、当然のように冷えないor温まらない事態に直結します。
熱交換器はエアコン正面にあるフィルターを外すと、その奥に見えます。しかし、熱交換器に付着した汚れはそう簡単に取ることができません。
汚れが確認できたら、購入店や専門業者、もしくは私たちカデンのエトウの家電レスキューにお電話ください。
◯熱交換器そのものが故障している場合
熱交換器が故障している場合は、熱交換器自体を新しいものに交換する必要があります。これ正直結構高いです。
古いエアコンを使っているなら、交換よりエアコンそのものを買い換えた方が良い場合もあるので、知識を持った方によく相談してから決めてください。
原因5 室外機の不具合
外にある室外機は、様々な理由で不具合を起こします。ただし、不具合の原因は自分で簡単に取り除けるものがほとんど。よく読んで対処しましょう。
◯室外機の周りに物を沢山置いている
エアコンの仕組みでご説明したように、冷房時、室外機からは熱が放出されています。温風が出ているのですが、室外機の周りに物が沢山あると熱放出がうまくいきません。つまり室内が冷えにくくなります。
対処法は簡単。室外機の周りには極力物を置かないようにしましょう。ちなみに植木鉢なんかもNGです。
◯室外機に直射日光が当たっている
室外機に直射日光が当たり、室外機そのものが熱を持っている場合も熱放出がうまくいかないことがあります。室外機自体を移動するのはなかなか難しいと思いますので、すだれで日陰を作る等、工夫してみてください。
◯室外機にハチが入り込む
室外機を使っていない時期(秋や春)にハチが入り込むことがあります。都会の方は「まさか!?」と思うかもしれませんが、自然が残る田舎では結構よく起こるトラブルなんです。
・ハチが室外機に巣を作る
ハチが巣を作るのは夏前。ちょうど室外機を使っていない時期なんです。変なところに巣を作られるとファンが回らなくなり、冷房時の熱放出がうまくいかなくなります。当然部屋は冷えにくくなります。
↓
・ハチがパイプに入り込んで詰まる
これも室外機を使っていない時期に起こります。室内機と室外機をつなぐ、本来冷媒がぐるぐる回るためのパイプにハチが入り込んでしまうんですね。
パイプが詰まると冷媒が動かなくなるので、もちろん冷やすことも温めることもできなくなります。
対策としては、エアコンを使わない時期は室外機に囲いをつけたり…。う〜ん、それくらいでしょうか。
ちなみにハチの巣だけでなく、ゴミが詰まってファンが回らなくなる場合もあります。季節の変わり目にはじめてエアコンを使うときは、室内機だけでなく、室外機もしっかりチェックするようにしてください。
原因6 冷媒(ガス)漏れ ※ただし、滅多にありません
エアコンの仕組みについては後ほど詳しく説明ささせていただきますが、基本的にエアコンは冷媒(ガス)を使って部屋を冷やしたり、温めたりしています。つまり、冷媒(ガス)がないとエアコンは何もできません。
その冷媒(ガス)が漏れるとは一大事。もちろん、早急に対処する必要があるのですが…。
実は「冷媒(ガス)漏れ」については、ものすごい誤解が浸透しています。詳しく説明する前に、エアコンの場合ほとんどの方が「冷媒」ではなく「ガス」と呼ぶので、ここからは「ガス」という呼び名で統一します。
私たちが、「エアコンが効かない」というご連絡を受けて家電レスキューに伺った先でよく聞くのが「ガスがなくなる時期みたいなので、補充してください」。これ、本当によく言われます。エアコンのガスって定期的に減るものだと勘違いしている方がめちゃくちゃ多いんです。
でも、ここではっきり言わせてください!! エアコンのガスは自然には減りません。ガスが減るのはほぼ人的なミスか、経年劣化よる場合のみ。
エアコンのガスが減る原因
・取り付け時の工事ミス
購入後の取り付け工事でなんらかのミスが発生した場合です。工事後すぐ判明するケースもありますし、1年以上気づかないケースもあります。
・配管の腐食や経年劣化
古いエアコンの場合、腐食や経年劣化で配管に穴が開く場合があり、そこからガスが漏れます。
・銅管のズレや変形
引っ越しなどで室外機を無理に動かすと、ガスを送りこむ銅管がずれたり、変形したりする場合があり、そこからガスが漏れます。
ガスが漏れる場合は必ず原因があります。だから、その原因を解決せずにただガスを補充しても、またすぐに漏れはじめます。
それを繰り返すことで「やっぱりガスは定期的に減るものだね」と誤解する方が多いんです。まさに悪循環。
とにかく、ガスは自然には減らない。これ、頭にしっかり入れて、誤解している人がいたら教えてあげてください。定期的なガス補充なんて、本当にお金の無駄です!
ガス漏れが原因で冷えない、温まらない場合は修理する方に必ず原因を調べてもらってください。そこで根本的な修理を行ないましょう。
原因7 コンプレッサーの故障
コンプレッサーとは室外機にある、冷媒を(ガス)循環させるための心臓部。耐久年数が長いので滅多に故障しませんが、10年以上経っている場合は経年劣化の可能性も考えられます。
ここが故障してしまったらもう仕方がない。プロにお願いするしかありません。
ちなみに、コンプレッサーが正常に動いているかどうかの簡易チェックは自分でもできます。
コンプレッサーの簡易作動チェック方法
冷房運転にして、室外機から温風が出れば一応正常。温風でなければどこかおかしい、となります。
原因8 弁やセンサーなど機械部の故障
原因1〜7の中に当てはまるものがない場合は、機械そのものの故障や劣化が考えられます。コンプレッサーの故障と同じく、プロに修理を頼みましょう。
原因9 エアコンの能力と部屋が釣り合ってない
「◯畳用」等のサイズ表記を思い切り勘違いして買ってしまった場合。これはもう自己責任。諦めもつくと思います。
悔しいのは「◯畳用」と、サイズはあっているのにエアコンが効きづらい場合。考えられる原因は家の環境です。
・断熱性が極端に低い
・直射日光が長時間差し込む
・木造か鉄筋か
・何階に住んでいるのか(角部屋かどうか)
なんてことも影響を与える場合があります。
対処法としては、買う前にお店の人としっかり話す。もう、これに尽きます。
サイズ表記だけを信じるのではなく(もちろん、ある程度は信じても大丈夫ですよ)、お店の方に自分の家の状況を詳しく話して、条件にあったものを選んでもらいましょう。
もう買ってしまった能力の合わないエアコンへの対処法は…。う〜ん、難しい。部屋に間仕切りを置いたりして風向きをコントロールすると少しいいかもしれません。
まとめ
今回はエアコンのトラブルで断トツ第1位「冷えない・温まらない」の原因と対処法についてご説明しました。下記のように、たくさんの原因がありましたが、自分で対処できるものも多かったですね。
後半では機械系統の故障も簡単に紹介していますが、これは頻度としてはかなり低め。使う前にきちんとチェックしたり、お掃除をこまめにしたり…。日々のお手入れを地道にすることが、トラブルのない快適エアコン生活への第一歩といえそうです。